Workers
今できることを精一杯、丁寧に。小さな積み重ねが、会社を動かす力になる
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國嶋 邦子さん
福島カラー印刷株式会社 取締役部長
- 福島市出身、福島市在住。41歳。都内の映像系専門学校を卒業後、都内の広告代理店へ入社。結婚・出産後、福島市出身の夫と共にUターン。アパレル正社員、事務パートを経て、2012年に福島カラー印刷株式会社へ正社員として入社。経理・総務・労務から営業まで幅広く携わり、2025年6月に取締役部長に就任。大学生・高校生の2児の母。
Q1.これまでのキャリアを教えてください。
これまで、都内の広告代理店や福島市内のアパレルなどで正社員として働き、結婚・出産を機に一度仕事を離れました。その後、子育てをしながら事務職のパートとして働く中で、もう一度しっかりと仕事に向き合いたいと思うようになり、上の子が小学生に上がるタイミングで、2012年に福島カラー印刷株式会社へ入社しました。
入社当初は経理・総務・労務などの管理部門を担当する事務職として採用されましたが、人手が足りない状況のなかで「この業務もやってみない?」と声をかけてもらうことが増え、営業をはじめ新聞折込媒体や商業印刷、Web案件のディレクションなど、次第に幅広い業務を任されるように。大変なことも多かったですが、「自分にできることはなんでもやってみよう!」とがむしゃらに取り組み、やりがいを感じていました。
その後、2022年に主任、2024年に課長、2025年に役員である取締役部長になりました。
Q2.お仕事の内容と、役員になったことでの変化について教えてください。
顧客分析や経営全般に関わりながら、会社全体の仕組みづくりや組織運営に携わっています。立場が変わってもフラットな関係を意識し、相談しやすい雰囲気を大切にしています。
仕事内容が大きく変わったわけではありませんが、「自分の業務」だけでなく「組織全体の成果」を意識するようになりました。
その一環として、20代の若手社員を中心にしたミーティングを定期的に開催し、案件の進行や課題を共有しながら、部署や役職の垣根を越えた連携を図っています。このような若手の動きが先輩や中堅層への刺激にもなり、「自分も挑戦してみよう」と思ってもらえたら嬉しいです。

若手社員とのミーティングで活発に意見交換を行う
Q3.クラウドソーシングやAIを活用した仕事効率化の取組について教えてください。
業務を外注するクラウドソーシングの導入には、人口減少社会における人材確保の難しさを見越し、全国にいる在宅ワーカーの力を借りようと考えた背景があります。現在、クラウドソーシングサービス「ママワークス」で弊社と契約を結ぶ登録ワーカーは約60名。月に40件ほどの案件が稼働しています。女性の比率が高く、仕事内容はイラスト、チラシや冊子デザイン、コーディングなどさまざまです。社内にはない斬新なアイデアや新しい視点をもたらしてくれ、業務の幅が広がりました。導入から2年が経ち、今ではなくてはならない仕組みになっています。
また、AI導入にも全社的に取り組んでいます。議事録作成、市場分析、コーディング支援、デザイン要点の整理、営業メール作成など、社員一人ひとりのアシスタントとして幅広く活用しています。
クラウドソーシングとAIで業務を効率化して生まれた時間を、お客様の課題解決と提案に活かしています。

Q4.仕事と家庭はどう両立していますか?
子どもが小さい頃は、社内に子育て支援制度の利用前例がなかったため、自ら両立の形を模索しました。業務のスケジュール管理やタイムマネジメントを工夫し、優先順位を決めて効率よく仕事を進めることで、基本的には定時退社ができるように努めていました。また、保育園からのお迎え要請には市内に住む祖父母にお願いしたり、土曜出勤の際は夫に子どもを見てもらったりと、家族の協力なしには両立を続けることはできませんでした。今は子どもたちも成長し、より仕事に向き合えるようになり、夫とは家事を分担して早く帰った方が夕食を作るようにしています。休日は子どものサッカーの試合に応援に行くなど、子どもとの時間も大切にしています。

休日に子どもの試合を見守る時間がリフレッシュに
Q5.今後の目標や展望を教えてください。
私個人としては、背伸びをしすぎず、自分らしく、目の前の仕事を丁寧に積み重ねていき、会社や仲間の成長につながる環境を整えていきたいです。昔から「今できることを丁寧に取り組む」ことを大切にしてきましたし、取締役になってもその気持ちは変わりません。
会社としては、20年、30年後の会社の姿を常に意識しています。AIやデジタル化が進み、印刷やデザインの形は変わっていったとしても、弊社が「福島になくてはならない会社」でありたいです。
地元企業の強みは、対面での関係づくりだと思います。制作物を納品して終わりではなく、困ったときにすぐ相談できる「寄り添う関係」を大切にしています。「福島カラー印刷に頼んでよかった」と喜んでもらえるような会社を目指しています。
Q6.自身のキャリアとプライベート・家庭との両立やバランスに悩む女性たちにメッセージをお願いします。
私はキャリアを最優先にしてきたわけではありません。子どもが小さい頃は、迷わず「子どもを優先しよう」と思っていました。子どもと過ごせる時間は、働く時間よりもずっと短いですから。
自分の中で何を大事にしたいか、優先順位をはっきりさせることが大切だと思います。そのうえで、「自分にできることを丁寧にやる」。私はどんな時もそれだけは妥協せずに続けてきました。
小さな積み重ねは、必ず力になります。自分のペースで少しずつ進んでいきましょう。
学生インタビュー 石川達也さん(会津大学4年)

Q.学生や若手のうちにやっておくべき経験は何だと思いますか?
若いうちは、とにかく何でもやってみたらいいと思います。これまでの経験に無駄なことは一つもなく、すべてが後で繋がっていくものです。仕事に関係なさそうな旅行や趣味、ボランティアなども、何がきっかけになるか分かりません。当社では「予定のないことも予定しておく」という“余白”を大切にしています。思いがけない発見が、次のチャンスに繋がることもありますからね。どんな経験も、いつか笑い話にできる時が来ると思っています。
Q.多様な人材が活躍できる職場づくりについて教えてください。
人への理解と寄り添う気持ちが一番大切だと思います。子育てや介護といった事情は誰にでも起こりうるものなので、当社では男性社員が在宅勤務をすることもあります。女性の働きやすさだけでなく、年齢や性別に関係なく、全員が気持ちよく働ける環境づくりを目指しています。社員一人ひとりの状況を理解し合い、支え合うことで、会社全体があたたかい雰囲気になっていると感じますね。
インタビューを終えて
國嶋さんのお話を通して、「挑戦すること」と「人を思いやること」の大切さを改めて感じました。
どんな経験も後から意味を持つという言葉には、前向きに生きるヒントが詰まっています。また、社員一人ひとりに寄り添い、働きやすい環境をつくろうとする姿勢からは、あたたかい社風が伝わってきました。
挑戦を応援し、人を大切にする。そんな福島カラー印刷さんの魅力を感じるインタビューでした。
・私を支えたコンテンツ(一曲・一冊・番組など)
韓国ドラマが大好きで、Netflixに支えられています(笑)。
一日の終わりにドラマを観ながら寝落ちする時間が、いちばん幸せです。
どんなに忙しい日でも、その時間があるだけでリセットできます。
(2025年11月取材)
(インタビュアー:齋藤幸子 撮影:古関マナミ)
基本情報
- 企業・団体名
- 福島カラー印刷株式会社
- 代表者
- 代表取締役 渡辺泰子
- 事業内容
- ・印刷物の企画・デザイン・制作
・Webサイトの企画・制作
・Webマーケティング支援
・動画制作
・PR戦略の企画・実行
・自社媒体の編集・発行
- 所在地
- 福島県福島市さくら3丁目2-7
- TEL
- 024-594-2188
- FAX
- 024-594-2189