建設業に女性の力を。安心して働き続けられる環境づくりを推進

佐藤健市(右) 菊地茉利江(中) 佐藤亜衣(左)
株式会社野地組
佐藤健市さん 総務部課長代理
二本松市出身、46才。大学卒業後、某保険会社や某レンタカー会社で営業、店長を経験。その後2013年株式会社野地組へ入社。総務部で官公庁への申請、採用活動、社内ITシステム管理等を行う。6才の1児の父。
菊地茉利江さん 工事部 土木課
本宮市出身、35才。県内短期大学卒業後、2010年株式会社野地組へ入社。工事部で現場代理人、施工管理の仕事を経験し、2級土木施工管理技士取得、その後1級土木施工管理技士補を取得し、現在に至る。会社の広報も担当。8才と10才の2児の母。
佐藤亜衣さん 総務部
二本松市出身、21才。県内短期大学卒業後、2024年株式会社野地組へ入社。総務部で社内文書作成、プレゼン資料作成等を行っている。社会人1年目。
Q1.ワーク・ライフ・バランス大賞(※)を受賞されましたが、主な取組を教えてください。
建設業界は他業種に比べて下積み期間が長いため、若手が定着しやすい環境づくりが重要だと考え、社員のワーク・ライフ・バランスの向上に取り組んでいます。
その一環として、「イクボス宣言」や「健康経営宣言」を掲げ、健康増進施策を導入。年1回のキャリアコンサルティングや月1回の個別メンター面談を実施し、社員のキャリア形成を支援しています。若手社員向けには食事付きのランチミーティングを開催し、現場勤務で顔を合わせる機会の少ない社員同士が交流できる場を提供。その結果、以前は若手の定着が課題でしたが、近年は定着率が向上しています。さらに、女性を含めた若手の採用活動を強化し、企業説明会にも積極的に参加。採用に関する不安を解消できるよう、丁寧な説明を心がけたことで、ここ3年ほどで若手社員が急増しました。現在は社員60名のうち、10~20代が約3割を占めています。(佐藤健市)
※「福島県次世代育成支援企業認証制度」の認証を取得している企業を対象に取組状況調査を実施し、その中から、特に優れた取組をしている企業を表彰する制度。
Q2.女性活躍推進の取組について教えてください
建設業界では長らく「男性は現場、女性は事務」という風潮がありましたが、弊社は女性社員が9名在籍しており、技術職において男女の区別なく、年齢や実務経験年数などの基準を満たした社員には資格試験に挑戦してもらっています。現在、1級土木施工管理技士補(監理技術者補佐)1名、2級建築施工管理技士1名の女性技術者が在籍しており、現場責任者として活躍しています。若手や女性には入札要件の加点があるため、業務面でも大きなメリットがあります。
さらに、現場パトロールやドローン操縦、スキルアップ研修、チームリーダー育成のための社外セミナーなどにも積極的に参加してもらい、役職を任せられるよう女性の意識向上を図っています。
企業説明会には菊地さんも参加し、仕事の大変さや家庭との両立について自身の体験を学生に直接伝えてもらっています。そのおかげで近年は2年連続で新卒の女性が入社しました。(佐藤健市)
建設業は父が携わっていたため興味はありましたが、男性社会のイメージが強く不安もありました。しかし、企業説明会で菊地さんと出会い、ライフステージが変わっても働き続けていることを知り、とても安心しました。将来的に結婚や子育てを考えているため、菊地さんから時短制度の活用について直接お話を聞けたことで具体的なイメージが湧きました。(佐藤亜衣)
Q3.女性が働きやすい職場環境となっていますか。
2人の子どもの産休・育休を取得し、復帰後は下の子の就学前まで9年間、9〜16時の時短勤務を活用しました。有給の子の看護休暇も年7日取得可能で、病気や行事による早退・休暇も取得しやすい環境です。休んだ分の業務は自分で調整し、優先順位をつけて進めています。
現在は主に社内業務を担当し、現場の社員が手が回らない雑務や庶務も引き受けています。お互い様の精神が根付き、後輩たちも休暇を取りやすい環境が整ってきていると感じます。
建設業界全体でも女性の活躍が進み、働きやすい環境が整いつつあります。例えば、国土交通省管轄の建設現場では「快適トイレ」の導入が進み、非水洗式の狭い男女共用トイレから、広く清潔な男女別の簡易水洗式トイレへと改善されています。(菊地)
弊社が「くるみん認定企業」であることは、女性がキャリアを築きやすい環境が整っている何よりの証だと感じています。産休・育休が取得しやすく、復職後も短時間勤務や時差出勤制度を柔軟に活用できるため、仕事と家庭の両立がしやすい職場です。菊地さんの働く姿を見て、女性が長期的に安定したキャリアを築ける環境が整っていることを実感しています。(佐藤健市)
Q4.仕事と家庭はどう両立していますか?
仕事と家庭を両立するためには、家族の支えと職場の理解が欠かせません。忙しい時期には、近所に住む両親と情報共有を徹底し、子どもたちの学童のお迎えなどをお願いしています。
2人の子どもたちは野球のスポーツ少年団に所属しており、週4日の練習に加え、シーズン中はほぼ毎週試合や遠征があります。出勤日と重なる際は有給休暇を活用していますが、上司や同僚の理解のおかげで柔軟に対応できています。その分、普段からいかに効率よく仕事をこなすか考えて仕事をしています。
子どもたちもお風呂掃除やお米とぎを手伝ってくれています。忙しくて時間を取れない日もありますが、休日には一緒にいちご狩りに行くなど、家族の時間も大切にしています。(菊地)
Q5.今後の目標を教えてください。
仕事と家庭の両立ができる職場環境を維持しながら、時代に合わせた働きやすい環境へと常に進化させていきたいと考えています。IT化の促進や人材育成にも力を入れ、効率的かつ成長できる職場を目指します。
コミュニケーションを大切にし、若手や女性からの意見やアイデアを積極的に取り入れることで、より働きやすい職場づくりにつなげていきたいです。(佐藤健市)
妊娠・出産・子育てといったライフステージの変化を経験しましたが、その中でも仕事を続ける姿を見せることで、後輩たちが安心して働き続けられる環境を築いていきたいです。
最近は建設現場でも女性の活躍が増え、環境が整いつつありますが、ここまで柔軟な制度が整っている企業はまだ少ないと感じます。広報担当として、弊社の取り組みを業界全体に広め、より多くの女性が活躍できる環境づくりに貢献したいです。(菊地)
入社して10か月が経ち、業務には少しずつ慣れてきましたが、まだ学ぶべきことが多いと感じています。これまでいただいたフィードバックを活かし、改善すべき点に意識を向けながら、さらに成長していきたいです。今後は、経理業務のスキル向上のため、建設業経理士の資格取得に挑戦したいと思っています。(佐藤亜衣)
Q6.女性活躍推進に取り組む企業の担当者や県内で就職する女性へメッセージをお願いします。
多くの企業では、女性活躍推進の担当者は1人いるかいないかという状況だと思います。1人で抱え込まず、「こんなアイデアはどうでしょう?」と気軽に意見を交換しながら、周囲を巻き込み協力を得ることが大切です。女性が働きやすく活躍できる職場を、楽しみながら改善していくことが理想ですね。
弊社でも、女性活躍推進に関するアイデアを日常的に周囲と相談し、若手社員のランチミーティングなどでも意見を募り、職場環境の向上に努めています。(佐藤健市)
2人の子どもの産休・育休を経て復職した際、安心して戻れる職場があり、子育てと仕事を両立できる環境を整えてもらえたことに感謝しています。その支えがあったからこそ、自分も会社に貢献したいという思いが強くなりました。
会社ごとの違いはあるものの、業界全体として女性が活躍しやすい環境が整いつつあると感じます。企業ごとに工夫を重ねながら、誰もが安心して働ける職場がさらに県内に増えていくことを願っています。(菊地)
女性が働きやすく、キャリアアップできる環境を整えてもらい、働きながら成長できることに大きな安心感と心強さを感じています。私が企業を選ぶ際には、女性の働きやすさや「くるみん認定」などの各種認定の有無、結婚・出産・育児を経てキャリアを築いている女性社員がいるかどうかに注目しました。
県内には、女性が働きやすく成長できる環境を整えている企業が増えてきています。自分らしいキャリアを築きながら、やりたいことに挑戦できる企業をぜひ見つけてください。(佐藤亜衣)
(2025年2月取材)
(インタビュアー:齋藤 幸子 撮影:古関 マナミ)
基本情報
- 企業・団体名
- 株式会社野地組
- 代表者
- 代表取締役 野地武之
- 事業内容
- 総合建設業、輸入住宅販売、不動産業
- 所在地
- 福島県二本松市油井字赤坂山27
- TEL
- 0243-23-0131
- FAX
- 0243-23-1296