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仕事も家庭も、両立!男女が共に活躍できる建設業を目指して
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山本 恵さん(左)堀越海地さん(中)阿部なつみさん(右)
福浜大一建設株式会社
- 山本 恵さん 総務部課長代理
いわき市小名浜出身、42歳。2005年に中途入社。総務部で庶務や経理を経て、現在は総合職として人事を中心に担当。会社で初めて産休・育休を取得。12歳の1児の母。
堀越 海地さん 土木部
いわき市小名浜出身、27歳。2016年入社。土木部で施工管理を担当。育休を取得し、積極的に育児に関わる。1歳の1児の父。
阿部 なつみさん 総務部
茨城県阿見町出身、32歳。大学卒業後、地元企業で事務職を経て結婚を機にいわき市へ。2018年に中途入社。総務部で経理、人事を担当。2度の育児休業を取得。4歳、1歳の2児の母。
Q1. 2024年度福島県ワーク・ライフ・バランス男女共同参画大賞を受賞されましたが、主な取組を教えてください。
山本さん:建設業はまだまだ女性が少ない業界です。だからこそ「女性がもっと増えてほしい」という思いが、私たちの取り組みの出発点にありました。もちろん女性だけではなく、男性も含めて誰もが働きやすい職場環境を作ることで、社員の幸福度やモチベーションが上がると思っています。
取り組みの一つとして休暇制度の充実を進めています。「ファミリーサポート休暇制度」は、高校3年生までの子どもを持つ社員や介護中の社員が年間50時間を上限に1時間単位で取得できる有給休暇です。子育てや介護など、それぞれの事情に寄り添うことで、社員が安心して働き続けられます。
育休についても、育児と仕事の両立を積極的にサポートするため、法定の育休制度に加えて2週間を限度に特別休暇を設けています。必ず取れる権利として上司からも声をかけるようにしたことで、職場全体に「男性も育休を取るのが当たり前」という空気が広がってきています。そうした小さな積み重ねが、働きやすい職場づくりにつながっていると感じています。
また、 DX化による残業時間の削減にも取り組んでいます。これまで手書きや電卓で行っていた勤怠管理や請求処理をデジタル化し、現場でもDX化を進めています。その結果、業務の効率が大幅に向上し、残業削減につながってきました。

Q2.女性活躍の推進に取り組むことで生まれた変化を教えてください。
山本さん:私が入社したころ、総務では女性は私一人だけでしたが、ここ10年ほどで女性の比率は2割ほどに増え、会社の雰囲気が大きく変わってきたと感じます。人数が増えたことで女性も意見を言いやすくなり、活躍の場も広がりました。以前は「掃除やお茶出しは女性がやるもの」という固定観念が残っていましたが、今では男性社員も含めて自然に分担されるようになり、職場全体の風通しが良くなっています。また、女性も総合職を選べるようになりました。私も総合職に変更してもらい、責任は増えましたが、以前よりやりがいを感じて働いています。
阿部さん:入社当時は女子トイレも男子トイレも私が掃除していましたが、「みんなで使う場所なので、みんなで気持ちよく使えるようにしたい」と上司に相談したところ、すぐに「男子トイレは男性が掃除する」という体制に変わったことがあります。古い慣習にとらわれることなく、声を上げれば改善してもらえるという安心感がありました。女性の声が業務改善にもつながり、結果として男女を問わず社員全員が働きやすい環境づくりに結びついていると感じます。

Q3.育休を取得したご経験や取得してよかったことなどを教えてください。
堀越さん:私は「産後パパ育休」の2週間と、その後に取得できる2週間の特別休暇を合わせ、計4週間の育休を取りました。産後すぐに取得した2週間は、育児や家事にしっかり関わる大切な期間になりました。その後、1歳半のタイミングで取得した育休では、イヤイヤ期に差しかかった子どもと遊んだり、日常の世話をしたりと、父親として子どもに深く関わることができました。同時に、日々子どもと向き合っている妻の大変さも改めて実感しました。普段は行けない平日の旅行に出かけたり、積極的に家事を担って妻に休んでもらったりと、家族との時間をしっかり取れたことは大きな財産となりました。
一方で、現場は繁忙期が重なり、実際に取得するまでには時間を要しました。もっと早い時期に育休を取り「寝不足で大変だった時期の妻を支えてあげられたら」という思いもあります。男性が育休を取ることは、家族のためだけでなく、自分自身にとってもかけがえのない経験になると思います。

Q4. ファミリーサポート休暇のメリットと職場の理解はいかがですか?
阿部さん:第1子出産後に復帰したときには、まだ「ファミリーサポート休暇」の制度がなく、子どもの体調不良で有給を使い切ってしまい、それ以降は欠勤にするしかないという状況にありました。2024年に第2子を出産し、復帰したタイミングで制度が導入されていたため、早速活用しています。幼稚園の行事や病後児保育の送迎など、1時間単位で柔軟に使えるのでとても助かっています。
子どもの体調不良などで頻繁に休まなければいけないときは、どうしても罪悪感を抱えてしまっていたのですが、上司や同僚から「気にしないで」「お互いさまだよ」と声をかけてもらえることで気持ちが救われました。制度の存在だけでなく、職場全体に理解が広がっていることも、子育てと仕事を両立する大きな励みになっています。

Q5. 仕事と家庭はどのように両立していますか?
山本さん:私が育休を取得したのは12年前で、会社ではじめての事例でした。半年間の育休をいただきましたが、復帰後は今ほど制度も整っていなかったので、近くに住む母や夫に協力してもらい、なんとかやりくりをしました。現在は当時に比べれば環境は良くなりましたが、より制度を整えて、両立しやすい環境にしていきたいです。
堀越さん:現場は、繁忙期になると休みを取りにくいのが正直なところです。幸い今の現場は複数のスタッフでカバーできる体制だったので育休を取れましたが、まだまだ課題もあります。うちは妻が専業主婦なので家事・育児を頼りきりになっていますが、将来妻が働きに出た時には、私もファミリーサポート休暇などを積極的に使って一緒に両立していきたいです。
阿部さん:私の場合、夫は平日不在が多く、実家も遠いため、ほぼワンオペで仕事と育児の両立をしています。仕事を終えて保育園に迎えに行き、寝かしつけまで済ませると平日の夜はぐったりです。そこで、休日にご飯を作り置きするなど、日々工夫をしています。ただ、会社に復帰して大人と話せる時間は、自分にとって大切な息抜きにもなっています。仕事を通じて社会の中で役に立てていると感じられ、それが大きな充実感につながっています。

Q6. 女性活躍の推進やワーク・ライフ・バランスの実現に取り組む県内企業や建設業への就職を検討されている女性や若者へのメッセージをお願いします。
山本さん:女性だけでなく、誰もが働きやすい環境を整えることが大切だと思います。そのためには、一人にしかできない業務をなくしたり、人員配置を工夫したりして、休暇制度を「お互いさま」として活用できるようにすることが必要です。また、弊社ではDX化を進めることで業務効率を高め、残業削減にもつながってきました。制度を整えるだけでなく、働き方の改善も含め、社員全員が利用しやすい雰囲気を会社全体でつくっていくことが大切だと思います。
堀越さん:「結婚したら寿退社」が当たり前だった時代から、今は女性も仕事を続けることが当たり前になってきています。建設業界でも女性が活躍できる場が広がり、男性も積極的に育児に参加するのが普通になってきました。残業時間の上限も法律で定められ、以前に比べて家庭に向き合える環境は整ってきました。女性も、育休後に職場へ復帰する方が増えています。だからこそ既成概念にとらわれず、ぜひ建設業に飛び込んできてほしいです。
阿部さん:弊社でも女性の施工管理職は少しずつ増えており、建設業界全体としても女性が働きやすい環境が整ってきています。女性専用更衣室や女性に配慮した仮設トイレなどハード面の配慮も進んできました。女性ならではの視点で現場を支え、活躍できる場は必ずあるので、興味のある方はぜひ挑戦してほしいです。私自身、若手社員や後に続く人たちが安心して制度を利用できる雰囲気づくりを心がけたいです。子どもが小さいうちは体調や家庭の事情で、仕事と家庭の両立に悩むこともあると思いますが、一人で抱え込まず、仲間に相談しながら一緒に乗り越えていきましょう。

学生インタビュー 柳沼美咲さん(奥羽大学3年)

Q.働き方改革が会社で始まる前後で、ご自身にどのような変化がありましたか?
山本さん:20年ほど前、育休制度はあったものの、育休取得は前例がありませんでした。私が初めて育休を取得した際には、前例がない分、使いづらさを感じました。復帰後は「とにかく働かなければ」という一心でがむしゃらに働いていましたが、今思えば、半年ではなく1年間の育休を取ればよかったと感じています。
堀越さん: 私が育休を取得したのは2年前ですが、育休に入る前に引き継ぎを全て行い、復帰後もスムーズに戻れる雰囲気がありました 。2週間という期間はあっという間で、もう少し長く取りたかったというのが正直な気持ちです 。
阿部さん:今の制度が整う前は、自分が体調を崩した時に無理をして働くことがありました。しかし、現在ではファミリーサポート休暇が新設されたことで、そうした悩みが解消され、無理なく仕事と育児を両立できるようになりました。この休暇は介護や看護にも利用できるため、今後は利用者がさらに増えると考えています。
Q. 建設業界を目指す女性や若者へ向けて、「福浜大一建設ならでは」の強みや魅力を教えてください。
山本さん:建設業は、現場での力仕事だけでなく、内勤の仕事もあります 。また、資格取得もでき、スキルアップを目指せる点も当社の魅力です 。
堀越さん:会社全体では女性社員が増えつつあります 。私の所属する土木部署はまだ男性が多いですが、それぞれにあった働き方ができることが魅力です。また、DX化が進んでおり、以前は手書きだった現場の作業がソフトでの事前入力に変わり、時間短縮につながっています 。
阿部さん:当社は、DX化が進んでいることもあり、「昔ならでは」の建設業の固定概念やイメージが減りつつあります 。子育て世代に理解があり、結婚、出産などでライフステージが変化したあとも問題なく働くことができることが魅力です。
インタビューを終えて
福浜大一建設株式会社さんへのインタビューを通して、働き方改革が単なる制度導入に留まらず、社員の生活やキャリアに深く根付いていることを実感しました。
特に、社内ではじめて育休を取得し、育児と仕事の両立を工夫してきたパイオニア的存在の経験が、現在の充実したファミリーサポート休暇や男性育休推進といった制度につながっていることに感銘を受けました。こうした歴史的な積み重ねが、社員一人ひとりが安心して働ける基盤となっているのだと感じました。
また、DX化や女性専用設備の整備など、建設業界の昔ながらのイメージを払拭しようとする会社の姿勢も印象的でした。風通しの良い社風や、社員同士の人間関係を大切にする文化も、働きやすさを支える大きな要素だと感じました。
今回のインタビューは、表面的な情報だけでなく、社員のリアルな声から企業の真の姿を知る貴重な機会となりました。福浜大一建設株式会社さんは、社員の人生に寄り添い、共に成長していく企業だと確信しました。
(2025年9月取材)
(インタビュアー:奥村サヤ 撮影:古関 マナミ)