Workers
専業主婦から、女性が働きやすい会社を設立。子育ての「あったらいいな」から商品開発へ

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齋藤 祐子さん
株式会社マザーソリューション 代表取締役社長
- 福島市出身、福島市在住。43歳。市内の短大在学中、アナウンス職の欠員募集の求人を見て中退を決意し就職。後にフリーランスとなり、テレビ局でキャスターとして活躍。出産と夫の転勤をきっかけに専業主婦となったことがきっかけで服飾専門学校に通い、ハンドメイド作品の販売をスタート。2022年「株式会社マザーソリューション」を設立し、子育て中の母親目線で「あったらいいな」を形にするキッズセーフティグッズなどの開発・製造・販売を行う。2児の母。
Q1. 起業のきっかけや仕事内容を教えてください。
妊娠・出産を機に長年勤めたマスコミの仕事を退職し、子どものために洋裁を始めたことが起業のきっかけです。妊娠中に始めたブログでハンドメイド作品を紹介したところ、フォロワーから「欲しい」「販売してみたら?」と反響があり、ハンドメイドサイトで販売を開始。注目クリエイターとして取り上げてもらい、販売が軌道に乗りました。
現在は、子育て中の困りごとを解決するアイテムを開発し、楽天市場を中心に、柄やオプションなどを選べるオーダーメイド・受注生産形式で販売しています。他商品との差別化・オリジナリティが大切な分野なので、品質や細部、サービス内容にこだわり、一生懸命考えて開発しています。
Q2. 齋藤さんの人生経験や視点を仕事にどう活かしていますか?
自分自身が暮らしの中で感じた小さな違和感や困りごとを、商品やサービスのヒントにしています。例えば、娘の弱視(視力が発達しない目の病気)の治療で必要になったアイパッチを、もっとかわいくおしゃれにできないか、また、キッズハーネス(子どもの飛び出しや迷子を防ぐ紐)を抵抗感なく使えるようにできないか、という視点で商品化しました。子育て中のスタッフと共に、「こんなものがあったらいいのに」というアイデアを形にして、共感してくれる人に向けて販売しています。
最近では、子育て中のパパや祖父母世代からの注文も増えており、育児のスタイルが多様化していると感じています。「父と子の身長差を埋めるために購入しました」というパパの声から、キッズハーネスの新たな使い方に気づかされることも。お客様との対話が商品を見直すきっかけにもなり、常にブラッシュアップを重ねています。
齋藤さんが開発したキッズハーネス(商品名:4wayキッズリードDX)。子どもが自らリングを握れるデザインになっている
Q3. 女性のみの会社としての苦労や、働きやすくするための工夫を教えてください。
現在は社員1名、パート7名、サポートスタッフ4名が在籍しています。子育て中の女性が多く、急な早退や欠勤は日常茶飯事ですが、それを前提として余裕を持った体制を整えています。パーツを事前にストックしておくなど、数名が休んでも業務を回せるよう工夫しています。
子どもの習い事や介護など各家庭の事情を全員で共有し、在宅勤務や時短勤務も取り入れながら、どうすれば会社もスタッフも無理なく続けられるかを話し合い、自分たちにとってベストな解決策を見出しています。
実は私も、起業前に一度就職活動をしたことがあります。しかし、時々発生する早朝勤務に対応できないという理由で、不採用になってしまいました。自分の能力不足ではなく、子育て中で時間に制限があることが理由だっただけに、悔しい思いをしました。だからこそ、誰もがライフステージに合わせて無理なく働ける環境をつくりたいと思っています。
Q4. 仕事と家庭の両立をどのようにされていますか?
仕事と家庭の両立には、夫の協力が不可欠です。最初は趣味の延長と見られていましたが、事業の拡大とともに夫の理解が深まり、今では積極的に家事や育児を担ってくれています。
仕事面では、スタッフ一人ひとりの適性を見極めながら、運営や商品開発の一部を思い切って任せています。それぞれが仕事の中にやりがいや楽しさを見出し、当事者意識を持って主体的に取り組んでくれていることが心強く、大きな支えになっています。
昨年は娘が小学校最後の年だったので、仕事を調整して何度か家族旅行に行きました。これまで忙しすぎて作れなかった家族との時間を少しずつ取り戻しています。
Q5. 今後の目標・ビジョンを教えてください。
2025年春に、弱視の早期発見と認知度向上を目的としたプロジェクトを立ち上げました。きっかけは、私自身の娘の弱視の発見が遅れ、「もっと早く気づけていれば…」と後悔が残ったことでした。また、治療具であるアイパッチの販売を通じて、全国に同じような悩みや不安、後悔を抱えている方が数多くいらっしゃることを知ったことも、大きな原動力となりました。
弱視は、早期に発見・治療ができれば、ほぼ治すことができると言われています。しかし、全国には発見が遅れたために、治療が間に合わないかもしれないと、切実な思いを抱えている方々がまだたくさんいるはずです。「もっと早く気づいてあげられる仕組みが作れないだろうか」──そんな思いから、リーフレットの配布や幼児施設での啓発活動をはじめました。
これまでは、育児や暮らしの中の困りごとを、モノづくりを通して解決することをモットーにしてきました。しかし、そもそも「困らない社会」をつくることができるなら、それに勝る喜びはありません。自分たちや子どもたちの未来を明るくするために、私たちにはどんなことができるのか。これからは、モノづくりという枠にとらわれず、広い視野でできることを考え、行動できる会社にしていきたいと考えています。
手作りのエプロンシアターや紙芝居を使って、弱視の認知度向上のためのイベントも開催
Q6. 経営者を目指す女性・新たなチャレンジを始めたい女性へメッセージをお願いします。
目標を紙に書いて貼っておくことをおすすめします。夢の実現のためにはすごく重要ですし、自分自身に与える影響が大きいと感じます。私の場合は、一般社団法人福島県発明協会の勉強会で紹介された「経営デザインシート」を使って、目標やビジョンを紙に書いて整理しています。これは、自分の理想の姿を描き、逆算して今何をすべきかを明確にできるツールで、私は半年ごとに書き換えています。おかげで、5年後を見据えていた目標が半年で達成できたことも。
未来を思い描くだけでなく、実際に書く!ここから始まる気がします。
・私を支えたコンテンツ
Amazonプライムで見た新旧ドラマ。孤独な徹夜仕事のお供でした。
・私の最初の一歩
ハンドメイドサイトでの販売が伸び悩んだ時に、「どうすれば自分の商品を差別化できるか」と考え始めたこと。
(2025年5月取材)
(インタビュアー:齋藤 幸子 撮影:古関 マナミ)
基本情報
- 企業・団体名
- 株式会社マザーソリューション
- 代表者
- 齋藤 祐子
- 事業内容
- キッズセーフティグッズ等の開発・製造・販売、弱視の子どもの支援など
- 所在地
- 福島県福島市泉字弐斗蒔2-4
- TEL
- 024-502-8005
- FAX